塊根植物やアガベの発根管理は水やり、土の乾き具合など、とても気を使います。 私もまだまだ経験が足りないので、芽が出たから発根したなと思って植え替えようと思ったら全然根が出てなかったなんてこともあります。 こんなとき、発根状況のわかる透明な鉢があったら管理しやすいのにと思っており、味噌の入っていた容器に穴を開けてパキポディウムの発根管理をしていた事もあったのですが、とてもいい商品をOSAKAYAで紹介できることになりました。山佳化成さんのSCOOP鉢シリーズです。 この鉢、ただ透明なだけではないんです。驚くべきなのは鉢の排水の構造がしっかり考えられており、発根管理専用鉢と言っても過言ではないくらいの機能が備わっているのです。 特徴を3つ、紹介していきます。 まずひとつめは鉢の内側の壁面には、円錐形の鉢には直線のガラスのカッティングのような突起の形状、ボウル状の鉢には炎のような曲線の模様が施されています。これは根のサークリングを防ぐ目的と、鉢の中の水分を鉢底に流れやすくする目的があります。根のサークリングとは、鉢の壁面に沿って根が分岐せずにくるくると廻ってしまい、下までしっかりの伸びてくれない状況のことを言います。根はしっかり下に分岐をしながら伸びてくれることが良いのです。SCOOP鉢の場合、この突起形状にぶつかることで、根が下に伸びることを促されます。円錐型の鉢の壁面・底面 ブラック色のほうが内部構造はわかりやすいですね。 ボウル型の鉢の壁面・底面 ブラック色で構造をご確認ください。ボウル鉢のサークリング防止の突起は炎のような模様になっています。 ※バラのサークリングした根(左)と、 まっすぐ下に伸びた根(右)の例 右のものは側面にスリットの入った鉢で育てたもの。 根がサークリングしてしまい根鉢の状態になると しっかりと水が吸い上げられなくなり健全な生育ができません。 SCOOP特徴の二つ目は、鉢底の形状。すでに写真をご覧頂いているわけですが、この鉢の鉢底穴は完璧なんです。一般的な植木鉢の中には、鉢底穴の位置が、そんなところに開いていたら、鉢の隅に水分が溜まってしまうじゃないか、という鉢が結構あります。鉢を作る人が植物を育てていないのかもしれません。ですが、この鉢は完璧。間違いなく植物好きな方が作った鉢です。相当な植物好きの方に違いありません。 円錐形の鉢は2種類の形状の違う穴が5個ずつ、計10個空いています。鉢の中心部は盛り上がっており、穴にうまく排水できるような構造になっています。そしてその10個の穴がそれぞれ鉢の壁面部分までスリットとして続いているのです。トレイなどの上に置かれた鉢の底から出てきた水分さえ、うまく蒸散できるように通気性のことが考えられています。 鉢の中心は盛り上がっています。水の溜まる余地などありません。 ブラックでも見てみましょう。わかりますでしょうか、この構造。5つの穴はサイドまでスリットが切られており、残り5つの穴は下向きの穴ではありますが、そこからサイドまで溝が切られています。 ボウル型の鉢も少し形状は違いますが、同じように12個の穴が開いており、そのうち6個の穴はサイドまで伸びるスリットになっており、残りの6個の穴も底面が浮いた設計になっているため、排水効率はどちらの鉢も最優秀賞です。 ブラック色。もはや穴の配置はアートです。機能が生み出す美しさは本物の美しさだと感じます。 そして、私が気に入っているSCOOP鉢の特徴の三つ目として、これらの機能がすべて鉢の内側に留められており、鉢の外側は何の変哲もないように見えることです。クリアやスモークの鉢の場合はその機能が透けて見えるわけですが、ブラックの鉢の場合は内部がとんでもない構造になっているなど、それを微塵も感じさせないそのツンとした感じがたまらない。 この鉢、メーカーの山佳化成さんのカタログにはサークリング防止や排水性能が優れるとだけ書いてあり、「分かっている人は使っている」というキャッチフレーズが書かれています。 いやいやいやいや、メーカーさん、謙虚すぎます!「知る人ぞ知る」のような、「背中で語る」のような感じです。この鉢を設計された方は植物好きなのはもちろんですが、もしかしたら都市計画の雨水や下水の排水計画をもともとやられていたかもしれないとさえ思わせるものがあります。機能が美しい、プロダクトとして最高の鉢であると思っています。 アガベ・ユタエンシス・エボリスピナの現地球の発根管理をSCOOP鉢で行いました。ちなみに水耕で根を出させてからSCOOP鉢に移しましたが、根の様子を確認できること、鉢内の乾きを確認できる安心感がありました。 鉢底ネットは使わなくていいです。いやむしろ使わないほうがいいです。鉢底の穴よりも大きな鉢底石を使えば、何も問題ありません。 ※ちなみに根は光を感じると成長を止めると言われているため、 発根管理中は鉢を厚紙で覆って遮光していましたが、 しっかり発根してしまえば特に関係ないように思います。 写真でうまく伝わるかわかりませんが、謙虚すぎるメーカーさんに代わり、SCOOP鉢の魅力をお伝えしました。商品ページには構造を確認してもらいえるよう、ブラックの鉢を色んな角度で撮影した動画も掲載していますので、この機能美を感じ取って頂ければと思います。