キャンプが苦手な40代ママが、S氏のキャンプ道具に心を奪われた日

キャンプが苦手な40代ママが、S氏のキャンプ道具に心を奪われた日

「君もキャンプに行こうよ!」

この言葉を、私は幸いなことに上司であるshinya氏から直接聞いたことはない。どうせ行くわけないと思っているからだと思う。

まず、虫。トンボやカブトムシは平気だ。息子が嬉しそうに捕まえてくるので、触るのは慣れた。だが、予測不能な動きで飛んでくるアイツらは苦手だ。キャンプ場は彼らの本拠地。人間の方がアウェイなのだ。必死に虫よけスプレーをまき散らし、不審者のように周りをキョロキョロしてしまう。

そして、テント設営。極度のめんどくさがり屋の私にとって、あれほど面倒な作業はない。説明書通りにやったはずなのに、なぜかポールが余る。風が吹けば今にも倒れそうで、夜中に目が覚めては「今、倒壊したらどうしよう」と不安に苛まれる。まるで、頼りない秘密基地で一夜を過ごすような心細さだ。

さらに、荷物。なぜこんなに荷物が多いのだろうか。家を出る時は「家出か?」と聞かれてもおかしくないほどの荷物量だ。準備だけで疲れてしまい、目的地に着いた頃には「もう帰りたい」と心の中でつぶやいている。

そんな私が、先日、S氏の熱い語りを聞くことになった。彼は仕事の合間、目を輝かせながら「キャンプの飯ってなんであんなに美味いんだろうな。飯盒で炊いたご飯なんか、家じゃ真似できない美味さだよ」と話していた。続けて、「キャンプ用品ってのは、うまくやろうとしなくても、使ってりゃなんとかなるもんだ」と笑う。彼の言葉は、まるでどこかのキャンプメーカーの宣伝文句のようだった。

しかし、後日、彼のSNSでその時の写真を見た。
映っていたのは、shinya氏の息子さんが、**YOPICARI(自社制作 鉄の焚き火台)**でマシュマロを焦げないように慎重に焼いている写真だった。

私はこれまで、キャンプ用品を単なる「道具」としてしか見ていなかった。しかし、写真の中の道具は、shinya氏が語っていたように、息子さんとの時間を特別なものに変える「魔法のアイテム」のように輝いて見えた。

結局、まだ私はキャンプに行っていない。極度のめんどくさがりなのは変わらない。だが、S氏の言葉と、その言葉を体現する道具たちの写真を見ていると、いつかあの26シェラで息子と二人で何か作ってみたいと思うようになった。

そして先日、私が「チタン製のカップでコーヒーを飲んでみたいんですよね」と話すと、shinya氏は「チタンの匂いがして美味くないから、やめたほうがいいよ」と笑いながら言った。

不便さを楽しむ達人であるS氏の言葉は、私に新しい気づきを与えてくれた。キャンプ用品を選ぶ時、ただ便利さだけを求めるのではなく、不便さの中に隠された小さな喜びを見つけ出すこと。それが、キャンプの本当の楽しみ方なのかもしれない。


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