鉄のシェラカップ-26SIERRA ニロクシェラ-開発ストーリー

鉄のシェラカップ-26SIERRA ニロクシェラ-開発ストーリー

提案編

「鉄のシェラカップを作ろう!」

キャンプが大好きな社員からそういわれた時、私は?がいくつも頭に浮かびました。

 鉄のシェラカップのいいところを見つけることができなかったからです。
既存のシェラカップはステンレス製かチタン製が多いのですが、それは錆びにくかったり、軽いからです。
鉄は錆びやすく、重いので作る前から鉄の完全KO。
勝てるところが見つかりません。
何がしたくて鉄でシェラカップを作るのか理解に苦しみました。

 しかし、鉄のシェラカップについて話を聞いてみて、キャンプで使うシーンを想像すると、少しづつ鉄のシェラカップへ興味がわいてきました。

 キャンプでは直火で調理をすることが多いです。
ステンレスやチタンのシェラカップを火にかけることはできますが、
黒くなったり、軽くて安定しないので調理向きではないと私は感じています。
 そのため、結局シェラカップはコーヒーやスープを飲むこともできる小さいボウルのような使い方をする人が多いのではないでしょうか。

 対して、鉄のシェラカップは完全に調理器具だと私は思います。
だって鉄のシェラカップでコーヒーを飲もうもんなら、シーズニングの油がプヨプヨ浮いてきてせっかくのコーヒータイムが台無しです。

 

さてさて、鉄のシェラカップで何を作るか・・・?
・ソーセージ、野菜を炒めて、お湯を入れて、コンソメで味を調えてスープ
 (いいね。子供もなぜか味噌汁は飲まないけどスープは飲むんだよなぁ)

・オリーブオイルを温めてエビ、キノコを入れてアンチョビちょと入れてアヒージョ
 (しばらくブクブクしていてレストランでも使えそう)

・鉄の伝導率、蓄熱性を生かしてご飯を炊いてみる。
 (鉄ならではのオコゲができそう)

・春キャンプでフキノトウのてんぷらを揚げてみる
 (道の駅で売っている季節の山菜なんか揚げてみたい)

・豚肉と野菜を入れてお湯と味噌を入れて豚汁
 (飲むとき熱いか?)

・フライパン代わりに使ってスクランブルエッグ
 (結局キャンプの朝はこれをパンにはさむ)

 

なんだか次々にメニューが出てくる。

ご飯はちょっと硬めに炊けるのでお水多めがおすすめです。
オコゲが好きならば長めに火にかければOK

 

アヒージョは熱伝導率が高く、蓄熱性も高いので◎
取手があり、底の油もすくいやすいので、
世の中のスペイン料理店のアヒージョはすべてこれで出してもらいたいと思うくらいベストマッチ!

 キャンプと鉄のシェラカップは相性がいいのではないか?
 いや、むしろキャンプには鉄のシェラカップが必須ではないか?!

段々とそんな気持ちになってきて、鉄のシェラカップを作ることを決意したのでした。

 

打合せ編

「鉄のシェラカップを作ってもらいたい」

そう私が言った時にYさんは何とも言えない顔をしていた。
私の言った事聞こえたよね?

 鉄のシェラカップの作成を担当したのは入社1年目のYさん。

彼女は多くの人がそうであるように
それまで溶接にはまったく遠い存在だったらしい。
それでもどういう縁か、Yさんは金属加工会社の品質管理部門で働いていました。溶接にも興味を持ち、鉄のシェラカップの話をしたのは彼女が溶接の仕事を初めてまだ数か月の時でした。

私は鉄のシェラカップの魅力を彼女に説明しました。
鉄は熱伝導率が高く調理をするのにステンレスやチタンよりも優れていること。キャンプの雰囲気を盛り上げる材質であること、使った後の手入れが少し面倒ではあるが、そういう点も含めて道具を育てていくっていう所が好きな人っていうのは必ずいるという事を熱く語りました。

というのも、私が当初そう感じたように、彼女が鉄でシェラカップを作る意味が分からないのだと思ったからです。

後から知ったのですが、彼女にとってそこは全く重要ではなく、
どうやったら鉄でシェラカップを作れるかを一生懸命考えていただけだったとの事。いやはや恥ずかしいです。

しばらくして試作品が出来上がりました。

うーん、いい感じなんだけど、なんか違う。
写真では分かりにくいのですが、持ってみるとちょっとしたフライパンくらいの重みがあり面白いけどキャンプに持っていくかと言われたらNo。
ジブリのキャラクターが使っていそうだなぁなんて思っていました。

やはり取手の形だよなぁとは分かっているのですが、
設備の問題でなかなか曲げ加工が難しかったのです。

それでも何とか試行錯誤して取手部分を作って取り付けたのがこちら。

いろいろ作りましたがやっぱりオーソドックスな形が一番ですね。

一気にシェラカップらしくなりました。

実はこの取っ手の形が決まってからも、板厚を何ミリにするかで試作品を何個も作っています。
厚すぎると重くて使いにくいけれど、薄すぎるとちょっと曲がりそう。
長くガンガン使ってもらいたいからという想いを込めてちょうどいい厚みを探しました。

作ってくれたYさんは「まだうまく溶接できないんですが・・・」と申し訳なさそうに言っていますが、私はそれがかえって一生懸命作ってくれた証のような気がして、かえって愛着が沸きます。この溶接の感じがいいんだよなぁ・・・
ん?!・・・ということは、Yさんの溶接が今後ドンドンうまくなっていくと、この初期ロットの溶接の感じはもう手に入らないということではないですか!

溶接する職人さんは溶接跡をなるべく綺麗に目立たないように作るのですが、
私は溶接の跡があえて残っているくらいが好きなのです。

そう思うと、このシェラカップを誰にも渡したくない気持ちになりました
(いや、作ってもらったんだからしっかり売れよ)

Yさんは以前品質管理部門にいたこともあって、溶接の品質にはとても気を使っています。出来上がったときの検査を行うのはもちろん、作ったシェラカップには自分が作ったものという印として代わりに小さくイニシャルを入れています。

 

実はこれは試作品をお願いしたときに彼女がコッソリと入れていたものなのですが、これいいじゃん!となってそのまま商品に採用しました。

 鉄のシェラカップは既存のステンレスやチタンのシェラカップの長所をすべて捨て去った製品のように思えます。

鉄製なので重くなり、持ち運びも不便だし、錆びやすいので使った後に油を塗らないとすぐに錆びてしまいます。

正直言ってそういう意味ではいいところ無し。

でも、鉄のシェラカップは直火で使うと途端に雰囲気を上げてくれるギアになります。

日も暮れてきて、少し肌寒いくらいの気温になり、いい感じに落ち着いた焚き火に鉄のシェラカップを載せる。
中身はガーリックとエビをたっぷり入れたアヒージョ。
ランタンの光がかすかに届くかどうかくらいの漆黒のシャラカップの中に焚火で少し焼いたばかりの表面をパリッと焼いたバゲットを浸す。
遠くに聞こえる虫の声を聴きながらビールを飲みながら食べる。

あ~キャンプ行きたい!
このシェラカップ持ってキャンプに行きたい!
このシェラカップを使うためだけにキャンプに行きたい!

そんな風に思える商品ができました。

オールラウンダーのステンレスのシェラカップに対し、
雰囲気重視の超偏ったキャンプギアが鉄のシェラカップはいかがですか?

 

商品名編

26SIERRAという名前ですが、このシェラカップの素材である鉄の元素記号が26であることとが一つ。

もう一つは昔の時間の数え方である1日を12刻(昼6刻、夜6刻)としていた時に1日中のことを2x6で二六(ニロク)時中と呼んでいたことから、1日中使ってもらいたいという想いをこめて26SIERRAという名前を付けました。

 

シーズニング編 

 さて、鉄のシェラカップを使う上で注意点があります。
まずは使い始める前にシーズニングという油をならす作業があります。

市販の鉄のフライパンの場合は錆防止用のコーティングがされているものが多いので、このコーティングをとって、油をならすのです。
これは鉄のフライパンを使う場合には必ず必要です。

この鉄のシェラカップもシーズニングしてから売るか、
シーズニングせずに売るかを迷ったのですが、
鉄のフライパンが好きな私としては「シーズニング済みのフライパンを買ったとしても、結局自分でシーズニングする!」という結論。

鉄の調理器具を好きな人は新品の鉄製品のシーズニングってお楽しみなんだと思います(違ってたらすみません)。
新品のスマホのフィルムと取る作業というか、
新しい靴を履いて外に出る一歩目というか。

それをフィルム取っておきました、地面にならしておきましたってなったらオイオイって思いませんか(なんか例えが違うかもって思ってきた)。

まぁ、鉄製品使う人はシーズニング好きなんです(きっと)!
鉄製品は使った後の手入れが必要だから結局シーズニングはやらなきゃいけないんです(それは必須)!

ということでOSAKAYAではシーズニングせずに商品を販売します。

さてシーズニングの方法ですが、ここに書くと「違う!」とか言われそうなので嫌なのですが、ここまで書いておいてやり方に触れないのも何なので簡単に説明します。

 

シーズニングのやり方

1,不要なワックス、油を落とす

鉄のシェラカップは建設資材用の鉄板で作られています。
そのため加工時の油がついているので綺麗に落としてください。
お湯を沸かして油を浮かせる場合もありますが、要は綺麗になればいいのです。
中性洗剤を使ってスポンジでゴシゴシ洗ってください。
内側も外側も取手もね。洗剤使うのはここが最後なので綺麗に洗ってください。

 

2,熱する

ガスコンロで熱します。
最近のガスコンロはセンサーが付いているのでなかなか難しいのですが
ちょっと浮かせながらやったり、隣のコンロを使ったりしてできないことは無いです。でもIHではセンサーがどうしても邪魔をしてできません。

煙がでることもありますが気にしないで熱します。
なお、この時出てくる煙は加工時の油が燃えているものらしいので
私はもう一度中性洗剤で洗います。洗った場合は再び火にかけます。
すると段々と色が変わってきます。
この時の色の変化はこの時しか見ることができないので、
シーズニングの醍醐味だと私は思っています。

 

ひっくり返して内側もあぶります。
ほーらほらほら黒くなってきた。
取手部分も熱してくださいね

3,油を塗る

黒くなってきたら油を塗ります。
すると全体に綺麗に黒く変わってきます。
油は何がいいとか悪いとかありますが、料理に使うサラダ油で結構です。
亜麻仁油(アマニオイル)なんて買ってきて塗ろうもんなら
奥さんに「なんでそんな高い油塗ってんの!」って怒られますから
安いサラダオイルでいいです。

塗るときに火傷しがちなので気を付けてください。
フライパンには取手がありますが、
このシェラカップは取手も熱くなりますからね。
私はトングでやったのですが落としやすいので
ペンチみたいなので押さえた方がいいと思います。

オイルを塗るとちょっとテカテカしてきました。
安定感が出た感じがしますよね。

オイルを塗ったら自然に冷まします。
熱して塗って冷ましてを何度か繰り返してくださいと書いている場合もありますが、気が短い私は一度しかしません。

そのあとは野菜くずを炒めます。あくまで野菜くずです。
冷蔵庫から出してきた玉ねぎを切って炒めては怒られますからね。
だってこれは野菜に鉄のにおいを移す作業なので、炒めた野菜は普通食べませんからね。

最後に水洗いしてください。
亀の子タワシみたいなのがいいです。
絶対に洗剤は使わないこと。せっかくなじませた油がとれてしまいます。
もしお米を炊いてこびり付いたらお湯を沸かしてください。
ポロポロ取れてきます。洗剤はNGです!

はい。こんな感じに黒くなりました。
洗った後は火にかけて水分を完全にとばします。
最後に油を塗って終了です。

油が馴染めばたとえ卵を焼こうがくっつかないのが鉄のフライパンのいいところ。ちゃんと油が馴染んだか心配な方は一度天ぷらを作ればしっかりなじみます。

使っているうちに同じ場所が焦げるという場合は、その部分に食べ物のカスがこびりついていたりサビが発生している場合があるので、その時はステンレスタワシと洗剤で綺麗に洗ってシーズニング作業をやり直します。

使えば使うほど油はなじみます。
ガンガン使って中華料理屋さんの中華鍋のような黒光りを目指してください

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